当院では、各種予防接種を受けることができます。現在の定期予防接種は生後2ヶ月からが開始するのが一般的になっています。
一般的に、1歳になったら接種できるワクチンにMR(麻疹・風疹)ワクチンがあります。
麻疹(はしか)は、麻疹ウイルスの感染によって起こる急性熱性発疹症の感染症です。潜伏期は約10~12日で、「カタル症状(咳・鼻汁)、結膜充血、めやに」等とともに38℃以上の発熱が認められます。この状態が数日続き、この時期はカタル期と呼ばれ、最も感染力が強いとされる時期です。その後発熱は約1℃はさがりますが、平熱に戻ることはなく再び高熱となり、耳の後ろから発疹が出現し始めます。発疹が出現する前日から「コプリック斑(周りが赤く中心が白い、口腔内できる小さい粘膜疹)」と呼ばれる粘膜疹が口腔内に認められます。発疹は1~2日のうちに全身に広がり、コプリック斑は数日で消失しますが、発疹期になるとカタル症状はさらに悪化し39~40℃台の発熱がさらに4~5日続きます。肺炎・中耳炎・クループ症候群等を合併することが多く、脳炎を合併することもあります。肺炎および脳炎は麻疹の2大死因といわれており、重症感染症の代表的なものといえます。日本では、2015年3月27日にWHO(世界保健機関)により麻疹排除状態にあると認められていました。しかし2023年に東京で海外から帰国後の日本人が日本で発症し、その方が利用したとされる新幹線の同車両に乗車していた他の方にも発症が認められるという報道がされました。空気感染、飛沫感染、接触感染で伝播され、感染力は非常に強く、同空間に短時間一緒にいただけで感染をするとされます。免疫がない人に感染すると、ほぼ100%発症します。
風疹(三日はしか)は、風疹ウイルスの感染によって起こる急性熱性発疹症です。春先から夏にかけて患者発生が多くみられ、潜伏期は2~3週間で、主な症状として発疹、発熱、リンパ節腫脹が認められますが、3つの症状がそろうのは約半数とされます。まれに血小板減少性紫斑病や脳炎を合併することがあります。一方で感染しても約15~30%の人は症状が現れないで終わることも知られています。飛沫感染、接触感染で伝播しますが、発疹の出る1週間前から発疹が出た後1週間程は感染力があるといわれています。しかし感染力は空気感染する麻疹や水痘と比較すると弱いといえます。症状は比較的軽症で、予後は一般に良好ですが、血小板減少性紫斑病、脳炎等の合併症が発生することがあり、軽視できない疾患です。大人が罹患すると、その症状は乳幼児と比較して一般に重症になりやすく、高熱の持続や関節痛の発現頻度が高いと言われています。風疹の最も重要な点は、妊娠20週頃までの妊婦が風疹ウイルスに感染すると、胎児も風疹ウイルスに感染し、出生後に難聴・先天性心疾患・白内障・精神運動発達遅滞等の先天性風疹症候群を発症する可能性が高くなる点です。そのため妊娠を希望される女性やその配偶者、周囲の人が風疹に対して免疫があるかを調べ、なければ妊娠前に風疹ワクチンを接種し免疫をつけることは非常に重要です。
MRワクチンは、1歳のお誕生日を迎えたらなるべく早く接種し、免疫をつけることが大切です。第Ⅰ期は1歳で接種し数年は高い免疫が維持されるとされ、第Ⅱ期の小学校就学前までに追加接種する必要はないと言われます。ただし1回のみの接種は、抗体がつかない人も約5%に認められるため、流行地域によっては追加接種をお勧めされる場合もあります。
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