当院では、各種予防接種を受けることができます。現在の定期予防接種は生後2ヶ月からが開始するのが一般的になっています。
小学校6年生から高校1年生の女性を対象にしたワクチンで、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンがあります。子宮頸癌は高リスク型(発癌性)のヒトパピローマウイルスが持続感染し、感染から数年から十数年の後に発症すると考えられています。ヒトパピローマウイルスの感染はほとんどが性的接触によるもので、性的接触によって子宮頸部粘膜に微細な傷が生じ、そこからウイルスが侵入して感染すると考えられています。感染すること自体は特別なことではなく、性交経験がある女性であれば誰でも感染する可能性があります。子宮頸癌は女性特有の癌としては、乳癌に次いで罹患率が高くなっていて、たとえ死に至らないまでも、ごく初期の癌を除いては子宮摘出となる可能性があり、その場合は妊娠や出産への影響はもちろん、排尿障害などの後遺症により日常生活に支障をきたすこともあります。また初期に診断を受け、円錐切除術などを受けた場合であっても、その後の妊娠では切迫早産や早産のリスクが高くなるといわれています。近年では20~30代で増加しているのが特徴です。なお子宮頸癌に関わるヒトパピローマウイルスの型は、国や地域によって多少の相違はありますが、およそ半数から3分の2がHPV16型と18型であるといわれています。
子宮頸癌だけでなくヒトパピローマウイルスの感染は、肛門癌、尖圭コンジローマ、外陰上皮内腫瘍・膣上皮内腫瘍などの癌も引き起こすとされます。誰が何を発症するかはわからないため、多くの人におけるワクチン接種によるHPV感染の予防、そして検診による早期発見が重要となります。ワクチン接種をした後でも20歳をすぎたら定期的な検診が呼びかけられています。
現在日本では3種類のHPVワクチンが使用できます。大きな違いはそれぞれワクチンに含まれているヒトパピローマウイルスの型の種類が違うというところです。一番少ないもので2つの型、その次に4つの型、2023年4月から認証された9つの型が含まれた3種類になります。どのワクチンにも予防効果がみられますが、すでに感染したウイルスを排除したり、病変の進行を抑制したりする作用はなく、ウイルスに感染する前に予防をすることが重要になります。子宮頸癌から検出されるヒトパピローマウイルスの型はワクチンに含まれない型もあるためすべての子宮頸癌を予防することはできません。過去にHPVワクチンの接種による副反応が取りざたされ、接種が控えられた時期があり、現在も副反応を心配される声がありますが、研究が進められ副反応のリスクよりワクチン接種をする有効性は明らかに高いとされ、現在はワクチンの積極的推奨が言われています。ワクチン接種が控えられた間に定期接種をする機会を逃している女性も現在は対象とする制度があります(2025年3月末まで)ので、自身が対象ではないか一度、確認をすることをお勧めしています。
HPVワクチンの接種は、種類や接種開始年齢によって2回もしくは3回の接種が必要となり、接種間隔を一定数空ける必要がありますので、スケジュールに余裕をもって接種をしていただくことをお勧めします。
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