当院では、各種予防接種を受けることができます。現在の定期予防接種は生後2ヶ月からが開始するのが一般的になっています。
一般的に、1歳になったら接種できるワクチンにおたふくかぜ(ムンプス)ワクチンがあります。おたふくかぜは、流行性耳下腺炎あるいはムンプスとも呼ばれ、ムンプスウイルスの感染によって起こる感染症です。主な症状は発熱と唾液腺(とくに耳下腺)の腫れ、痛みです。感染した人の約3割は感染しても明らかな症状がでません。感染するのは基本的には飛沫感染(唾液など)で、周囲の人に感染させる可能性がある期間は、耳下腺腫脹の6日前から耳下腺・顎下腺・舌下線の腫脹が発現してからほぼ5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで出席停止となりますが出席停止などに関する決まりはありません。
発症の好発年齢は4~5歳が最も多く、次いで2~3歳、6~7歳の順で、報告の約70%が3~7歳とされ、子どもに起こりやすい病気の1つであることが分かります。2~3週間の潜伏期(平均18日前後)とされます。合併症としては、精巣炎、卵巣炎、膵炎、腎炎、髄膜炎、髄膜脳炎および感音性難聴などがあります。思春期以降に初めて感染すると、精巣炎(20~40%)や卵巣炎(5%)の合併頻度が高くなり、精巣炎を合併した場合には様々な程度の睾丸萎縮を伴い、精子数は減少しますが不妊症の原因となるのは稀です。また、腺組織では唾液腺のほか膵臓に炎症を起こすことがあります。
髄膜炎は合併症として珍しくなく、おたふくかぜの経過中の発熱、頭痛、嘔吐は髄膜炎を疑う症状として注意が必要です。ただし、髄膜炎の症状がなくても髄液細胞数の増加がみられたり、ウイルスが検出されたりすることもあります。感音性難聴はおたふくかぜの重要な合併症で、発症すると聴力の回復は困難でおたふくかぜの合併症として最も警戒すべきものの1つと考えられています。
国内では4~6年周期で流行が報告されていましたが、ここ数年間流行はみられません。
おたふくかぜのワクチンは現在、定期接種のワクチンではなく、任意接種となっています。接種には料金がかかります。接種の標準的なスケジュールは、麻しん・風しん(MR)ワクチンと同時で、1回目は1歳になったら早期に、2回目を年長さんに接種するのを推奨しています。過去には1回で十分とされていましたが、1回のみ接種している国ではおたふくかぜの発症率予防が88%減少し、2回接種している国では発症率予防が99%まで上昇したことが分かっており、現在は2回接種することを推奨されています。
予防接種
画像元:日本小児科学会より抜粋