1月に入り下痢や嘔吐症状で受診される患者さまが増加傾向にあります。胃腸炎の症状を引き起こすとされるウイルスや菌は多数あります。
当院では、多数あるウイルスの中でもアデノウイルス、ノロウイルス、ロタウイルスも迅速検査が可能です。年齢等で実施できない検査もありますが、これらのウイルスは嘔吐症状が激しくみられたり、下痢が長引いたりする傾向にあります。乳幼児が罹ると重症化しやすいとされるロタウイルスは、生後2ヶ月から開始する定期接種ワクチンの一つであるロタウイルスワクチンで重症化を予防しています。症状が重く血便が見られるような場合は、必要時には精密な検査をすることもあります。
さまざまなウイルスや菌が原因で起こる胃腸炎は、最初に嘔吐症状や腹痛から始まり、水分や食事が取れなくなり、嘔吐が落ち着いてくる頃に下痢になったりすることで、ひどい時には脱水症状を引き起こしたりする可能性があります。とくに体の水分量が多いとされる子どもは、半日以上、嘔吐が続き、水分が取れないと大人よりも短時間で脱水になりやすいと言われています。
脱水症状の所見としては、ぐったりしている、目がくぼんで見える、尿が半日以上でない、泣いても涙がでない、大泉門がくぼんで見える(乳児のみ)などを観察して頂き、早期に病院受診をしましょう。
食事が取れないと不安になる親御さんもいらっしゃると思いますが、胃腸炎の症状があるときは脱水を引き起こさないためにも、水分が取れるかどうかに留意してください。水分も取れない状態で食事を開始しようとしても胃の受け入れができず、さらに嘔吐を引き起こしかねません。水分は一度に多量に取るのではなく、キャップ1杯分の量から飲水し、徐々に1回量を増やしていくという【少量を頻回に】がポイントとなります。また、水分もお茶や水ではなく、経口補水液など体に吸収されやすく、電解質のバランスを整えてくれるようなものを推奨しています。お茶や水には、糖分が含まれておらず嘔吐や下痢によって体内から奪われている電解質を補うことができず、低血糖になったりすることもあります。少量の水分を飲水しただけでも嘔吐を繰り返すようであれば、必要時は点滴などで水分を体にいれてあげる処置が必要なこともありますので、早めに病院を受診しましょう。
胃腸炎は、嘔吐物や便・だ液などにウイルスが含まれており、そのうえ感染力も強く、アルコールでは消毒効果がありません。次亜塩素酸ナトリウム(哺乳瓶を消毒するときに使用する液)での消毒が効果的です。症状がある人の使用したものは共用しないのはもちろんのことですが、嘔吐物などの処理にはマスク・手袋を着用し、拭いたり、洗うことができるものは次亜塩素酸を薄めたもので拭いたり、浸けおきして洗濯するのが効果的です。掃除には可能な限り次亜塩素酸を使用してください。