子どもが咳をしているとき、原因が感染症によるものであれば、他の人にうつしてしまう可能性があります。
そもそも「咳」は、空気の通り道であるのどや鼻、気管や肺(気道)にたまった痰や唾液を出したり、ほこりやウイルス、細菌、異物などが体の中に入りこまないように外に出したりするための防御反応です。気道はとても敏感に刺激を感知し、その刺激が脳にある咳中枢に伝わり指令を出します。咳そのものは「反射」によって無意識に出ているため、意識すれば止まるものではありませ ん。 また、むやみに咳を止めてしまうような強い咳止め薬は、かえって症状を重くしたり長引かせたりすることもあります。
喘鳴(ぜんめい)とは、何らかの原因で気道が狭くなったことにより、息を吸ったり吐いたりする時にゼーゼー、ヒューヒューと聞こえる音の事です。喘鳴は呼吸状態が悪い時のサインです。
次のような状態は緊急性のある病気が原因となっている可能性があります。
また、子どもの咳症状による受診の目安としては、4段階に分けられます。
咳の原因の多くは気道感染症です。
咳は大きく2つの種類に分けることができます。ひとつは痰が出ない「コンコン」や「コホコホ」といった乾いた咳、もうひとつは「ゲホゲホ」や「ゴホゴホ」といった痰が出る湿った咳です。
乾いた咳(コンコンという咳)はのどの炎症によって起こる場合が多くなります。風邪などによるものが多く、ほかにも百日咳、心因性の咳などがあります。また、声門周囲に炎症が起こると、子どもの細い空気の通り道が狭くなり、呼吸困難になることもあります(クループ症候群)。
一方湿った咳(ゴホンゴホンという咳)の原因は、のどよりも先の場所である気管支に長く留まった痰によって起こります。子どもは痰をつくるのが大人より多く、それをうまく出すことができないために痰が長くたまり続け、それによって空気の通り道である気管支が狭まります。湿った咳は、気管支炎や肺炎など、のどよりも奥の方で炎症が起きているときに出ます。しかし、鼻汁がのどの奥まで流れたとき(後鼻漏:こうびろう)にも湿った咳が出ます。アレルギー性鼻炎の場合も鼻汁により咳が誘発され事もありますが、その原因となる物質は、花粉やハウスダストなどたくさんあります。咳だけでなく、鼻水やくしゃみをともないます。 喘息の咳は長く続く気管支の炎症によって粘膜が腫れ、気管支を取り巻く筋肉の動きによって更に空気の通り道が狭くなってしまっている状態です。そのため特徴的な呼吸音「ゼーゼー」「ヒューヒュ―」といった喘鳴が聞こえます。
喘鳴は息を吐くとき(呼気性)に聞こえるものと息を吸うとき(吸気性)に聞こえるものに分かれます。呼気性喘鳴は気管支の狭窄により起こります。代表的な病気は気管支喘息ですが、子どもは気管支がもともと狭いのでちょっとした風邪でもゼーゼーとなる場合があります。吸気性喘鳴は喉のあたりの狭窄により起こります。代表的な病気は前述のクループ症候群ですが、風邪もひいていなかった子が突然呼吸困難となり、吸気性の喘鳴が聴取される場合は気道異物の可能性があるので急いで病院を受診する必要があります。アレルギー症状の一つとして喘鳴が出る場合もあります。この時も救急車などで速やかに病院を受診しましょう。
咳や喘鳴はさまざまな病気の症状として出るものですが、何が原因となっているかははっきりとしない場合も多いです。呼吸状態が少しでも気になるようであれば受診していただくことをおすすめします。
咳が出ていても元気で喘鳴もなく、ご飯も食べられていて夜も寝られるようであれば自宅で様子を見ていてもよいでしょう。逆に呼吸がしんどそうだったり、繰り返し咳こみ嘔吐をしたり、喘鳴が聞こえるようであれば速やかに病院を受診してください。
小児科では、咳や喘鳴などの症状に対して診察を行い、まずは呼吸状態を確認します。呼吸状態が悪い場合は速やかに処置を行います。その後、可能な限り原因を探っていきます。症状の経過、周囲の流行、予防接種歴、出生歴、アレルギーなども確認します。必要に応じてパルスオキシメーターで酸素の値を確認したり、血液検査やレントゲン撮影、迅速抗原検査、肺機能検査などを行います。
痰を出しやすくするためのお薬、咳を鎮めるお薬、気管支を拡げるお薬など、患者さんの症状や原因によってお薬をお出しします。