子どもの発熱

子どもの発熱

写真:発熱

子どもが急に熱を出すとあわててしまうかもしれませんが、まずは本当にあわてるような状態かどうかを確認する必要があります。熱があってもいつもと同じ様子で遊んでおり、食欲もあるようなら自宅で安静にして経過を見てもかまいません。ただ、生後3か月未満の乳児の発熱はすみやかに医療機関を受診してください。対処が遅れると重症化する場合があるので、たとえ元気そうに見えていても早めに病院を受診しましょう。

症状が発熱のみで救急車を呼ぶ必要がある場合はほぼありませんが、熱以外に、

  • 呼びかけても反応しない、ずっとぼんやりとしている
  • 異常な言動が30分以上続いている
  • 呼吸がおかしい、呼吸が止まりそう、呼吸をしていない時がある
  • けいれんが続いている

といった状態がみられる場合はすぐに救急車で病院を受診してください。

通常生後6ヶ月から5歳までにおこる、急な発熱に伴い体がけいれんする「熱性けいれん」という状態があります。目が上の方を見て固定されたり一点を凝視したりする、歯を食いしばって強くこぶしを握る、体が反り返る、手足がピクピク動く、などの症状がみられます。ほとんどの場合は5分以内でけいれんはおさまりますが、5分以上けいれんが続くときは救急車を呼びましょう。5分以内でけいれんがおさまり、その後、意識状態も徐々に改善していき普段通りの状態になればあわてる事は少ないですが、それでも一度早めに病院で診察を受ける事をおすすめします。

救急車を使うほどではなくてもすみやかに医療機関を受診した方が良い状態は、

  • 元気がない、活気がない、あやしても笑わない、顔色が悪い
  • 12時間以上おしっこがでていない
  • ゼイゼイ、ヒューヒューと音がする呼吸をしている
  • 苦しそうで眠れない、激しく泣く
  • 逆に眠ってばかりいる(起こしてもすぐに眠ってしまう)
  • 嘔吐や下痢をくり返す。吐物や便に血が混じっている。
  • 水分が取れない、唇や肌がかさかさしてきた

のような状態があります。
症状がどんどん悪化したり、普段と比べてしんどそうな場合は早めに病院を受診して下さい。

発熱があっても以下の項目をすべて満たすような状態であれば、しばらく自宅で様子をみてもかまいません。

  • 水分や食事は摂れる
  • 夜は眠れている
  • あやせば笑う
  • 起きたらいつもと同じような感じで遊ぼうとする、機嫌は悪くない

ただし、数日経っても熱が続くようなら一度病院を受診してください。

子どもが発熱を起こす原因

子どもが発熱する原因の多くはウイルス感染症です。しかし、原因となるウイルスは多数存在するため、どのウイルスに感染したのかを特定することは困難です。ただ、インフルエンザウイルスやヘルペスウイルスなど一部を除き、ほとんどのウイルスに対しては特効薬がありません。多くの場合は対症療法のみでだいたい3日前後で熱がさがります。細菌感染症の場合は熱が長引き重症化する事もあるため、抗生剤を使用します。

緊急性の高い発熱の原因となるのが、脳炎と髄膜炎です。いずれも、ウイルスや細菌に感染することで起こり、脳に炎症が起こったものを脳炎、脳や脊髄を覆う膜である髄膜に炎症が起こったものを髄膜炎といいます。発熱とともに頭痛、嘔吐、意識障害(ぼんやりする)などがみられます。
感染症以外で発熱の原因となる疾患は、腫瘍や膠原病、川崎病、熱中症、予防接種の副反応(不活化ワクチンは接種後1~2日、生ワクチンは約1週間後に発熱)などがあります。

朝さがって夜あがるタイプなのか、ずっと高いままなのかなど、熱がどのように出ているかも診断に役立つ場合がありますので、いつ何度の熱が出たかといった記録を残しておく事も大切です。

子どもが発熱のときは

子どもが発熱をしたものの小児科受診に急を要しない状態であれば、次のような対処をしながら経過を見ていきましょう。
自宅ではまず体温と症状の現れ方をよく観察してください。可能であれば記録をしておきましょう。38℃を超えるような熱の場合、熱の上がり始めは体がガタガタと震え、寒気を訴えます。これはまだ熱が上がっているサインですので、衣類や布団で温めます。体温が上がりきったら、震えや寒気が治まりますので、熱がこもらないように薄着にし、嫌がらないようなら氷枕や保冷剤などで頭や脇などを冷やします。

熱があるときでも子どもが食事を摂れそうであれば、おかゆや軟らかくゆでたうどん、ヨーグルトなど食べやすいものを与えます。喉越しのよいアイスクリームでも良いです。乳児ならば、ミルクや母乳を与えてもよいです。熱が高いと固形物はなかなか喉を通りません。数日であればイオンや糖分を含むような水分だけでも大丈夫な事が多いですが、嘔吐が続いたり、水分も摂取できないような状態であればすぐに病院を受診してください。

発熱が38.5℃を超え、子どもが辛そうにしているときは、熱が上がりきったタイミングで解熱剤(アセトアミノフェン)を使用してもよいでしょう。年齢や体重に合ったものを使用しますが、市販の解熱剤には子どもには使用できないものがあります。必ずかかりつけ医などで処方してもらい、指示に従って使用するようにしましょう。
ただ、解熱剤は薬が効いている間だけ一時的に熱を下げる薬であり、病気を直接治す薬ではありません。熱が下がったタイミングで栄養を摂らせたり、寝かせてあげるなど体力を保つ目的で使うのが効果的です。

発熱に対する小児科診療

病院では体温を測定し、発熱の経過を保護者の方からうかがい、診察をします。一度の診察で発熱の原因を特定できないこともあります。全身状態の評価を行い、必要に応じて治療を行ったり、薬を出したり、家に帰ってから気を付けるポイントなどを説明します。
熱源・原因検索のために血液検査や尿検査、感染症の迅速検査(インフルエンザや溶連菌、アデノウイルス、RSウイルス、マイコプラズマなど)、レントゲン検査などを行います。
状態や検査の結果もふまえ、それぞれの症状に合わせた薬を処方します。
詳しい検査や入院治療が必要と判断した場合は近隣の医療機関に紹介します。