典型的な蕁麻疹(じんましん)は虫に刺された時のように、皮膚の一部が赤くくっきりと盛り上がり(膨疹:ぼうしん)、かゆみを伴います。蕁麻疹の正体は、皮膚の中にある小さな血管が膨らみ、血液成分のひとつである「血漿」が周囲に染み出たものです。
膨疹はしばらくすると(通常は24時間以内に)跡形なく消えてしまいます。場所を変えながら半日~1日にわたって繰り返し現れることも少なくありませんが、一つひとつの赤みやブツブツは数十分~数時間で消えてしまいます。また、たいていの蕁麻疹は痒みを伴い、場合によってはチクチクしたり焼けるような感じがしたりすることもあります。
皮膚の盛り上がりは、全体に平べったくなったり、赤い輪のようになったりしますが、円形、花びら状、楕円形、線状、地図状とさまざまで、大きさも1~2mm程度のものや手足を覆うくらいのものから、それぞれの盛り上がりが合わさって体表面の大部分が覆われてしまうくらいの大きさになることもあります。
基本的には蕁麻疹は急性で一過性の病気です。特に子どもに関しては、これまで長期間にわたって症状が継続する「慢性蕁麻疹」は少ないとされてきましたが、最近では症状が1~2か月にわたるケースも多くなってきています。また、特殊な蕁麻疹として「血管性浮腫」と呼ばれる、突然まぶたや唇に腫れが現れるものがあります。血管性浮腫は、反応している血管が通常の蕁麻疹よりも深い部位であるため、くっきりとした盛り上がりや赤みは目立たない皮膚の腫れとして現れます。痒みは伴いませんが、腫れが消えるのに2~3日かかります。
蕁麻疹は、原因や誘因がはっきりしているものとそうでないものの大きく2つの種類に分けることができます。
一つは、何らかの特定の刺激が加わった時だけに症状が現れる「刺激誘発型の蕁麻疹」で、食べ物・飲み物、薬物、植物、日光、皮膚の圧迫・接触やこすれ、温熱や寒冷などが刺激となります。原因を突き止められることが多いタイプです。
もう一つは、はっきりとした誘因がなく繰り返し症状が現れる特発性の蕁麻疹です。蕁麻疹の多くはこちらのタイプで、ストレス、感染症、疲労が影響を与えるとされています。症状が1か月以上にわたる「慢性蕁麻疹」は、原因を突き止められないことが多いタイプです。
また、蕁麻疹の原因・誘因となるものは多岐にわたりますが、これらは毎回必ず・誰にでも蕁麻疹を引き起こすわけではありせん。体質や外的な要因が組み合わさることで症状が現れることもあると考えられ、そのどちらかを避けることができれば症状が現れるのを防ぐことができます。特定の食品を食べた直後の運動で蕁麻疹などが現れる場合などがわかりやすい例です。この例の場合、蕁麻疹以外にも呼吸困難や血圧低下などが起こることもあり、命に関わることもあります。
のどや気管支、腸管などの感染症が蕁麻疹の原因となる場合もあります。そのほか蕁麻疹が起こりやすくなる病気として、ウイルス性肝炎、甲状腺疾患、胃炎などが挙げられます。また、膠原病や血管炎、血清病などの全身の病気の症状のひとつとして蕁麻疹が現れることもあります。
蕁麻疹が現れた場合に自宅でできる対応としては、冷やす事です。目の周りなどを冷やす場合は注意が必要です。また痒みの悪化を防止するため体を温めないようにしたり、湯船に入るのは避けてシャワーだけにしたりしましょう。
原因が食べ物や薬物の場合、原因となるものを除去したり避けたりすることと、症状が現れた際への備えをすることも大切です。また、そうした情報を子どもたちが通う学校や幼稚園、保育園などと共有することも忘れずに行っておきましょう。
蕁麻疹の多くは原因がはっきりしないものですが、ストレスが影響し症状を悪化させることがわかっています。さらに、環境の変化によって蕁麻疹の症状が現れたりなくなったりすることもあります。
なお、蕁麻疹以外に次のような症状がみられる場合はアナフィラキシーかもしれません。注意深い観察が必要となりますのですぐに医療機関を受診しましょう。
乳幼児の場合は、
などに注意しましょう。
蕁麻疹がなんらかの原因で起こっているのであれば、血液検査や原因と疑われる物質を皮膚に載せて針で突く「ブリックテスト」などの皮膚検査を行い、原因物質の特定を試みます。アレルギーから起こっているのではない場合には、誘発時の状況など、これまでの経過や診察所見から蕁麻疹の原因や背景となる病気を探ります。
圧迫やこすれ、光線や温熱、寒冷などの物理的刺激によって蕁麻疹が引き起こされていると考えられる場合は、誘因となる刺激を加えて蕁麻疹が現れるかどうかを行い確認することもあります。
蕁麻疹の治療方法は、第一に原因となったり悪化させる要因となるものを特定し、それを取り除いたり避けたりすることです。第二に抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤という種類のお薬の服用や注射を行います。ただし、眠気を引き起こす副作用があるため、お薬の選択は慎重に行います。塗り薬などの外用薬は痒みを多少軽減させる程度の効果です。